LIFE LOG(塵芥の終着点)

塵芥の終着点

あなたの無駄な時間をもう少し無駄にするブログ

恥ずかしいことから逃げようとしたら更に恥ずかしかった話

公衆の面前において、気まずい雰囲気や恥ずかしい思いというものは誰しもが一度は経験するものだろう。

例えば電車内。さっきまで大声で会話していた友人が先に降りた後の電車内。さっきまで談笑に夢中でテンション爆上げだった自分が、一瞬にして静寂の中の一人に様変わりするこの空気感。何故か恥ずかしい思いにならないだろうか。

例えば人通りの多い道。何もないところで躓いた後の雰囲気。視線は一斉に自分へ向けられる。何故か恥ずかしい思いにならないだろうか。

そう、誰かがいればいいのだ。恥というものは実は共有できる仕組みになっていて、恥力530000を食らったとしても4人で行動していたら一人当たり132500に分配が可能であるのだ。等分であるかはさておいて。

しかし現実は孤独だ。530000をモロに食らった瞬間、自分はいつも思うのだ。

「ああ、この世界には自分ひとりしかいないんだな」

もう気分は終末の世界に立ち向かう一人のソルジャーである。携帯固形栄養食で飢えをしのいだ夜に焚火に映る妹の幻影なんか見ながらつぶやく感じである。

 

で、その宿命のソルジャーはどうやってその状況を乗り越えるかというと、方法は単純で、「逃避」である。防衛機制でもおなじみの逃避である。

電車の静寂が嫌ならイヤホンを付けて騒がしくしてしまえばいい。転んだ時の視線が嫌なら人目につかないトイレにでもダッシュしてしまえばいいのだ。ソルジャーってほら、泥臭さから美を見出すものだからさ。

 

そんなわけでやっと本題なのだが、突然だがみなさんは「とらのあな池袋店」に行ったことはあるだろうか。少し説明すると、池袋のとらあなは離れた位置に2店舗存在し、それぞれ男性向けと女性向けで隔離されたような配置になっている。シコ猿の僕はというと、当然男性向けの成年向け単行本コーナーに幼児が、じゃなくて用事があったのである。

ところが、このとらのあなA店(女性向けはB店である。このアルファベットを覚えておいてほしい)なかなか立地が悪い。多分だけどエレベーターでしか行けない。そしてビルディング自体が保険会社等と複合で利用している感じでスーツを着たリーマンとキモオタが同じ箱の中で上昇する奇妙な光景が楽しめる(楽しめない)。で、そのエレベーターの中には各階の案内表示が無いのだ。つまり乗る前にしっかり目的の階を覚えてボタンを幼い、じゃなくて押さないといけないのだ。まぁ、ここまで言えば大体予想はつくと思うけど、そういうことである。自分が押した階のドアが開いた瞬間気づいた――――

 

 

 

 

 

 

(押し間違えた)

 

 

 

 

眼前に広がるのは一面の闇。照明の消えた保険会社。静謐が支配する結界。

で、押し間違えたなら当然すぐに閉めて目的の場所を押し直せばいいだけなのだが、今回はその主導権が僕になかった。何故ならエレベーターボーイ一般人(以下、エレ人)がいたからである。エレ人(以下、エレ)は1階にて「何階ですか?」と聞いてくれて、僕はそれに「5階です!」と堂々と答えてしまったのだ。5階、広がる闇、見つめるエレ(以下、エ)。エの親切心を無駄にする心苦しさもあったが、何より「間違えました」というたった一言がどうしても恥ずかしくて言えなかった。今になって振り返るとなんでそんなことをしたのか皆目見当がつかないが、僕は考えてしまったらしい。

 

「あと1階は階段で上がればいいか!!!」

 

なんか降りてしまった。階段へのドア、鍵かかってた。監視カメラにバッチリ捉えられた。

「何してんだお前……」

蔑むようなトーンで警備員が話しかけてきた。さぁ、何してんでしょうね?

そんなわけで警備員さんと一緒にとらのあながある6階へ向かった。ぶっちゃけ、その数分間は21年間生きてきた中でベスト3に入る恥ずかしさだった。警備員さんにエロ漫画物色を誘ったらどうなるんだろう……とか考えるくらいの余裕はあった。

結論何が言いたいかというと、逃避はあくまで逃避でしかないということである。逃避した先が安住の地である保証なんてどこにもない。ダメージは倍々になって襲い掛かってくるかもしれないし、恥力106万かもしれない。

だから受け入れるのだ。為替ピカチュウで有り金を溶かしてあの世GOするくらいなら、ライフで受けろって、そういう話なのだ。

「痛みを受け入れて、それを乗り越えてこそ、真の自分だよ」

ソルジャー僕からの一言で結びとさせていただこう。

 

 

 

※後日談

 

「久々に来たけどもう間違えないぞ!とらあなは6階と7階だな!よし7階!ぽちっと!」

 

半年ぶりくらいに再戦。7を押せば終わる一瞬の自分戦争であった。

チーン。ドアが開く。

「チーンってな。ちー、え、ち、ちん……」

 

目の前に広がっていたのは、男性同士が熱く身を寄せ合った数々のイラスト。あられもない姿になった六つ子。刀の擬人化の刀の部分の鍔迫り合い。男性客、自分1人。

 

「あああああああああああああああああああ」

 

とらのあな池袋B店、そこにはそう書かれていた。ソルジャーは世界を捨てた。